第77章 知っているか

彼女は二人を、隣り合う客室へとそれぞれ案内した。

部屋の造りこそ簡素だが、掃除は隅々まで行き届いている。シーツや布団は真新しいものに取り替えられており、どこか懐かしいお日様の匂いがした。

「不便なところだけど、一晩我慢して。手洗いは廊下の突き当たりにあるから」

橘凛は淡々とした口調で告げ、踵を返そうとする。

「用がないなら、私はもう休むわ」

時計の針はまだ午後九時を回っていない。都会の夜行性な彼らにとっては、早すぎる時刻だ。

だが橘凛は、腹に一物抱えた、明らかに反りの合わない男二人とこれ以上顔を突き合わせていることに耐えられなかった。一刻も早く静寂の中に身を隠したかったのだ。

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